【所得税】退職金増税の愚策(退職所得の基礎を解説)

今回は、政府が退職金課税の見直しを検討しているというニュースから。

【退職金増税】岸田政権の退職金課税見直しが「氷河期世代」を狙い撃ち 「長く勤めても増税、5年未満でも増税」の支離滅裂』(マネーポストWEB/Yahoo!ニュース)

基本的に、税制改正は通常国会で法律を成立させるため、税制にまつわるニュースは年末から出てくるのが普通です。国政選挙前でもないのに、このようなニュースがこの時期に出るのは異例といえます。

さて、退職金課税の見直しの前に、退職金課税のイロハから解説します。

退職金は、所得税・個人住民税では「退職所得」として課税されます。一般的に退職金は給与の後払いと解釈されますが、月給や賞与とは異なり、他の所得と分け税額計算を行う「分離課税」が採用されています。退職金には、対応する経費は基本的にありませんが、勤務年数に応じた所得控除があります。

退職所得=退職金の額(額面)-所得控除

所得控除は、20年まで40万円/年、以降は70万円/年ですので、35年勤めた会社から退職金をもらった場合の所得控除は20年×40万円+(35年-20年)×70万円=1,850万円となります。つまり、退職金が2,200万円以下であれば退職所得は0となり、退職金に課される所得税・住民税も0円となります。
ここが重要で、所得控除が大きいため役員以外の退職金に所得税・住民税がかかるケースは少ないと考えられます。

さらに、退職所得に係る税額は退職所得を2で割ってから税率をかけて求めるので、さらに優遇されていますが、先述の通り、所得控除が退職金を上回る場合は関係ありません。

退職所得の所得控除には、勤続5年以内の場合や、一定の役員の退職金に対する特例もありますが、ここでは省略します。

 

話を戻します。

ここで、記事で触れられている、所得控除を一律40万円/年に下げた場合を考えます。
この場合、35年勤めた場合の所得控除は35年×40万円=1,400万円に減ります。
もし退職金が1,850万円だとすると、所得控除の減少差450万円の半分、225万円に対して所得税と住民税が課税され、両者合わせて38万円余りとなります。現行では所得控除が1,850万円なので、税額は0です。

結論として、①をやろうということは、一般庶民の退職金を増税することが目的だということになります。もちろん、多額の退職金をもらう場合も増税となりますが、そもそも多い退職金や税額に対して、増税幅は小幅です。

物価の上昇に給与の増加が追いつかず、物価の上昇の結果として消費税の実質負担も増えている中でこのような検討がなされるということ自体、政府は国民の生活のことは考えていない、あるいは金持ち・財界のために政治をやっていると断言できます。これはインボイス制度の導入によって零細事業者をいじめるのと思考が同じです。また、国内経済が低迷し続ける中で、個人消費を冷え込ませる政策ばかり出すというのは、経済オンチが国を牛耳っているとみられても仕方ありません。嫌なら、選挙で怒りの1票を投じることです。

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